
「ジモティー」詐欺シリーズの第4弾です。
*2019年に書いた記事のリライトになります。
強制執行の手続き
少額訴訟で裁判に勝つところまできました。
しかし、裁判に勝ったからといってお金が戻ってくることはありません。
僕が裁判に勝って手に入れたのは、あくまでも“財産を堂々と取り戻す権利”でしかありません。
次のステップとして、その権利を使って強制執行をします。
少額訴訟の債権執行には下記の4つがあります。
a) 預貯金債権
b) 給料債権
c) 賃料債権
d) 敷金(保証金)返還請求権
定石では(a)の預貯金債権、つまり口座に入っている現金を狙います。
しかし、口座に現金が入っていないと空振りに終わるどころか、強制執行の費用分がさらにマイナスになるというリスクもあります。
被告の立場で考えてみると、普通は訴訟で負けたら相手にバレている口座からは現金を抜きますよね。
(仕事で使っている口座は別です)
なので、判決が出ると同時に執行する手続きもあるのですが、僕はそこまではやっていませんでした。
しかしこんなクソみたいな詐欺を働く被告にそのような知恵が働くだろうかという淡い期待もあります。
それに加えて、(d)の敷金返還請求も行う予定です。
これは簡単にいうと被告が借りている家の敷金を差し押さえるものです。
差し押さえる先は被告ではなくてその物件の大家さんになります。
ただし、差し押さえられたからといって直ぐに退去を迫ることはできません。
1)被告が今の住居を退去するまで待つ
2)退去時に敷金が残る
いう2つの条件が成り立たないといけません。
なのでこちらの執行はお金を取り戻すというよりは、「大家にバレる ≒ 被告にダメージを与える」ということを主目的に行います。
住所から大家さんを調べることは弁護士でなくても可能です。
正確な住所がわかれば、法務局のWebサイトからその土地の持ち主(大家さん)が調べられます。
登記・供託オンライン申請システムは、不動産登記、商業・法人登記、動産譲渡登記、債権譲渡登記、供託、成年後見登記及び電子公証に関する手続をオンラインにより申請するシステムです。
僕は被告の現地まで行ったので、不動産屋の看板なども撮影済みです。
念の為上記のサイトとの一致を確認しました。
僕の場合は大家さんが法人だったので、同じく法務局のサイトからその法人の登記事項証明書を取得しました。
それが特定できると、大家さんに敷金の返還請求が可能となります。
一般的に敷金が借主に返金される可能性はそんなに高くないと認識していますし、こんな詐欺を働くクソ野郎の住む部屋は退去時の原状復帰にお金がかかることも容易に想像できます。
しかし上に書いたように相手にダメージを与えて詐欺を働いたことを後悔させるのが主目的なので、大家さんに対して強制執行する意味はあると考えます。
ただ、現実的に敷金からお金が取り戻せる可能性は低いので、債権執行の敷金返還の割合は少なめにするつもりです。
この強制執行をするのには下記の書類の提出が必要です。
・当事者目録
・請求債権目録
・差押債権目録
・少額訴訟の執行文の原本
・債務名義正本の送達証明書
・第三債務者の登記事項証明書
┗銀行向け
┗大家さん向け
書類が多いのにもウンザリですが、その書式が独特の言い回しのものばかりなので、簡易裁判所に行って書き方のレクチャーを受けてきました。
レクチャーといっても「どう書けばいいですか?」というレベルだと失礼なので、自分なりに理解して記載してわからない部分だけ聞くというスタンスで伺っています。
簡易裁判所の事務官さんは僕のような超初心者にも簡易裁判所の事務官の方はスゴく丁寧に応対してくれます。
自分でなんとかしようという思いと多少の時間があれば、少額訴訟なら自力でなんとかなると思います。
書類の面倒臭さに加えて、費用も大きな問題です。
今回の強制執行では申立手数料で4,000円、郵便切手で7,085円(債務者が1人の場合は5,330円)とその他の手数料で、合計10,705円が掛かりました。
これ以外にそもそもの少額訴訟費用として約6,000円、相手の本名を調べるのに約2,000円。
合計で2万円ほど使っています。
これに詐欺でダマされたお金もあるので、赤字は膨らむ一方です。
債権差押処分書の発行

強制執行のために第三債権者に送付する「債権差押処分書」が発行されました。
債権差押処分
1.債権者の申立てにより、上記請求債権の弁済に充てるため、別紙請求債権目録記載の執行権のある債務名義の正本に基づき、債務者が第三債務者に対して有する別紙差押債権目録記載の債権を差し押さえる。
2.債務者は、前項により差し押さえられた債権について取立てその他の処分をしてはならない。
3.第三債務者は、第1項により差し押されられた債権について債務者に対し弁済をしてはならない
この書類は詐欺野郎宛ではなくて、第三債務者にあたる銀行と詐欺野郎が住んでいるマンションの大家さんに送られています。
それと同じものが僕にも届いただけで、まだ結果はわかりません。
債権は回収できませんでした
債権は口座にある『(a)預貯金』と自宅の賃貸マンションの『(d)敷金(保証金)』の2つを狙いました。
詐欺に使われたゆうちょ銀行の口座の残金は百数十円でした。
取り戻すための手数料の方が金額が大きいので、預貯金債権は諦めて強制執行は取り下げることにしました。
また賃貸マンションの敷金を大家さん宛てに差し押さえましたが、こちらも実質的には戻ってこないものと覚悟しています。
敷金を残しても差し押さえられるのであれば、原状復帰の見積もりを高くして手元に残すでしょう。
僕が大家さんの立場でもそうします。
ただしそれは織り込み済みです。
敷金を差し押さえる目的はお金を取り戻すことよりも、大家さんに賃貸人(=被告)は裁判で敷金を差し押さえられるようなヤバい人だと認識させることにあります。
それによって間接的に被告にダメージを与えられればと思って敷金の差し押さえをしましたので、一応最低限の目的は達成しました。
まとめ
詐欺の被害額の15,000円に加えて、少額訴訟費用と強制執行費用で20,000円ほど掛かっています。
合計で35,000円以上の損害です。
しかし、一連の貴重な経験ができたこととで感覚的にはマイナスにはなっていません。
ただし強制執行を取り下げるために取下書を記入するときはやっぱり悔しかったです。
試合(裁判)に買って勝負(債権回収)に負けた気分です。
とはいえ、この件がなかったら人生で裁判所に行くことなんてなかったと思うので、裁判を起こしたことには1ミリの後悔もありません。
むしろこの経験ができてよかったと思っています。
飲み会での鉄板ネタがひとつできましたし、このブログも多くの人の目に触れてもらえることを期待しています。
また詐欺以外にも今後なにかしらのトラブルがあったときに気軽に訴訟を起こすことができますし。笑
この記事が詐欺にあってしまった人のサポートや、詐欺を働こうとする人の抑制になれば幸いです。