「禁止されていない」と「やっていい」は違う|琵琶湖のエリの釣りで考えたこと

琵琶湖で釣りをしていると杭や網でつくられた「エリ」を見かけます。
魚が集まりそうな変化がある場所に設置されており、バス釣りのポイントとして気になる存在かもしれません。

僕は現在エリの近くでは釣りをしないようにしています。
単に「マナーだから」というだけではありません。

エリは漁業者の大切な漁具であり、近くを船で航行したり釣りをしたりすると漁具を傷つける可能性がありますし、水中に張られたロープなどに接触する危険もあります。

何より法律や規則に明確な距離が書かれているかどうかだけで、釣りをしてよい場所を判断するべきではないと考えるようになりました。

過去の自分への反省も含めて書いてみます。

琵琶湖の「エリ」とは

エリは、琵琶湖で行われている小型定置網漁業の漁具です。

湖岸から沖に向かって矢印型に網を張り、岸辺に寄ってきた魚を「つぼ」と呼ばれる部分へ誘導して漁獲します。
主にアユ、フナ、ホンモロコなどを対象とした、琵琶湖を代表する漁法の一つです。

釣り人から見ると水中の変化を生むストラクチャーのように見えるかもしれません。
しかし、当然ながらエリは釣り人のために設置されたものではありません。
漁業者が仕事で使用している漁具です。

エリの近くで釣りをしてもよいのか

この問題を考えるとき、単純に「エリの近くで釣りをすることを一律に禁止する法律があるか」という視点だけは十分ではありません。

エリが設置されている区域には、漁業法に基づく第2種共同漁業権が設定されています。

漁業権は、一定の水域で特定の漁業を排他的に営む権利です。釣りなど別の活動がすべて直ちに禁止されるわけではありませんが、漁業を妨げて漁業権を侵害した場合には、処罰される可能性があります。

また、滋賀県「保護水面・禁止区域」では、エリ近くでの船舶の航行や魚釣りについて、漁具の損傷だけでなく、水中のロープなどへの接触にもつながり大変危険だとして、エリから離れて釣りをするよう案内しています。

したがって、

法律に一律の禁止距離が書かれていないから、エリのすぐ近くで釣りをしてよい

とはいえません。

漁具を傷つける、操業を妨げる、ルアーやラインを残す、ロープに接触するといった行為は、漁業者への迷惑だけでなく、自分自身の安全にも関わります。

「50m」は法律ではなく自主ルールとして考える

琵琶湖のボートフィッシングでは、「エリから50m離れる」という話を聞くことがあります。

琵琶湖遊漁船業協会は自主ルールとして、一般の大型エリは50m以内、外来魚エリは周囲10mで釣りをしないよう定めています。
理由として、漁具の破損防止や、引っ掛かったルアーによる漁業者のけがを防ぐことを挙げています。

ここは整理して理解しておく必要があります。

「50m」という数字は、すべての釣り人に一律適用される法律上の禁止距離として紹介するのではなく、漁業者とのトラブルや事故を避けるための自主的な基準として捉えるのが適切です。

一方、滋賀県の現在の案内は、距離だけを基準にするのではなく、「エリから離れてください」としています。

現場ではエリの形状やロープの張られ方、操業状況、風向きなども異なります。

「50m離れたから絶対に大丈夫」と数字だけを免罪符にするのではなく、漁具や操業の妨げにならない距離を十分に取る。
そのうえで、少しでも判断に迷うなら近づかない。

僕はそのくらい慎重でよいと思っています。

僕自身もエリの近くで釣りをしていました

ここからは、僕自身の反省です。

僕はエリの内側に入り込んで釣りをしたことはありません。
また、エリを構成する杭やロープにルアーを引っ掛けたこともありません。

しかし過去を振り返ると、周囲から見れば「エリで釣りをしている」と思われても仕方がない距離で釣りをしたことはあります。

当時の自分の中には、

エリの中に入っていない
漁具にルアーを引っ掛けていない
操業の邪魔をしていない

という線引きがありました。

自分としてはルールを守っているつもりでした。
しかし、それはあくまで自分側の判断です。

離れた場所から見ている漁業者や、別の釣り人からすれば、エリのすぐ近くで釣りをしているように見えたかもしれません。

釣り人同士では通じる細かな距離感や意図も、立場が変われば伝わりません。

「実際に迷惑をかけていなければ問題ない」だけでなく、「迷惑をかける可能性があるように見えないか」まで考える必要があったと思います。

「禁止されていない」と「やってよい」は同じではない

釣り場では、法律、条例、施設の規則、大会ルール、地域の慣習、マナーなど、異なる性質の基準が重なっています。
法律に明確な禁止規定がなければ、直ちに違法になるとは限りません。

しかし、

禁止されていないから、やってよい

と考えてしまうと、湖を仕事の場として使う漁業者や、周辺住民、ほかのレジャー利用者との関係が抜け落ちてしまいます。

釣り人にとっては休日の数時間でも、漁業者にとってエリは仕事を支える大切な漁具です。

ルアーが網やロープに残れば漁具を傷つける可能性があります。
回収されなかったフックによって、漁業者がけがをするかもしれません。

水中のロープは、釣り人のボートにとっても危険です。

このような状況であれば、法律上の禁止距離を探すよりも、最初から十分に離れる方が、お互いにとって合理的です。

ルールを守るだけでなく、トラブルを生まないことを目指す

釣りのルールやマナーについて話すと、意見がぶつかることがあります。

人によって、
・法律に違反していなければよい
・大会やマリーナのルールに従えばよい
・周囲から誤解される行動も避けるべき
・昔から行われてきた釣り方だから問題ない

など、判断の基準が違うからです。

一度できあがった判断基準を、他人が言葉だけで変えることは簡単ではありません。
だから僕は、誰かを言い負かすことを目的にしていません。
大事なのは、議論に勝つことではなく、漁具の損傷や事故、漁業者とのトラブルを実際に減らすことです。

この記事を読んだ人が、

エリの近くは避けておこう
いつもより少し大きく距離を取ろう
釣行前に現在のルールを確認しておこう

と思ってくれたなら、それで十分です。

釣りをするからこそ、琵琶湖との関わり方を考えたい

このような話をすると、ときどき、

魚や環境を大切にしたいなら、そもそも釣りをしなければよい

という意見が出ます。

確かに、魚への負担や環境への影響を完全になくすのであれば、釣りをしないという結論になります。

しかし僕は、釣りを続けることと、環境や地域への負担を減らすことは、完全な二者択一ではないと思っています。
釣りをする以上、影響をゼロにはできません。

それでも、
・漁具や操業場所に近づかない
・ルアーやラインを残さない
・ゴミを持ち帰る
・航行や騒音に配慮する
・その時点のルールを確認する

といった行動はできます。

完璧でなければ考える意味がないのではなく、釣りを続けるからこそ、少しでもよい関わり方を考え続けたい。
それが今の僕の考えです。

まとめ:迷ったら、エリから離れる

エリは琵琶湖の伝統的な漁業を支える、漁業者の大切な漁具です。

設置区域には漁業権が設定されており、漁業を妨害して漁業権を侵害した場合には処罰される可能性があります。
また、網や水中のロープに接触する危険もあるため、滋賀県はエリから離れて釣りをするよう案内しています。

僕自身、以前は「エリの中に入らなければよい」「漁具に引っ掛けなければよい」と考えていました。

しかし今は、自分の意図だけでなく、漁業者への影響、安全性、周囲からの見え方まで含めて判断する必要があると思っています。

結論はシンプルです。

判断に迷うような距離なら、そこで釣りをしない。

「迷ったらやめる」

釣れる可能性のある場所を一つ諦めても、琵琶湖全体から見れば失うものはわずかです。

反対に、漁業者とのトラブルや漁具の損傷が起これば、釣り人全体が失うものは大きくなります。

「禁止されているか」だけでなく、「トラブルを生まないか」「相手の仕事を妨げないか」まで考える。

それを、僕自身の釣りに関する判断軸として、これからも大切にしていきたいと思います。

なお、琵琶湖や滋賀県内の河川における漁業権漁場、採捕禁止区域、遊漁ルールは、滋賀県のWEBアプリ「FiShiga」で確認できます。
釣行前に最新情報を確認することをおすすめします。


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