
唐突ですが、今江克隆さんは好きなバスプロの一人です。
といってもイマカツ原理主義者ではないので、彼の全てを肯定するわけではありません。
そんな彼がブログで吐露していたトップアスリートとしての苦悩にとても共感できました。
*2015年の記事をリライトしています。
今江さんの強み
・バストーナメントにおいて長年成績を残し続けていること
・商売の巧みさ
・癌の克服
等々、他のバスプロにはない圧倒的な魅力があります。
好き嫌いはあるにしても、彼の実力を認めないバサーはほとんどいないのではないでしょうか。
また自分が社会人になってスゴいと思ったのは、社会人とバスプロをトップレベルで両立していたことです。
会社としてのIMAKATSUを立ち上げるまでは彼は専門商社で働いていました。
学生時代に読んでいた「TACKLE BOX」誌のマッチプレー選手権の記事で、「彼(今江さん)は前日は深夜まで得意先を接待し、それを終えてから琵琶湖に向かい徹夜で釣りを続けるのであった…」といった感じで彼の多忙&タフさを紹介していたことを今でもハッキリと覚えています。
彼は僕の一回り上なので当時は20代後半。
体力はあれど、仕事も相当ハードだったことは容易に想像できます。
僕なんて仕事をこなすだけでもいっぱいいっぱいなのに、更にトップトーナメンターとして全国を駆けずり回るために体力と資金力に加えて、仕事も相当上手くやっていたんだと思います。
(接待をノンアルコールで乗り切る話術や休日出勤をしないための立ち回りも含めて)
また、僕自身が当時受験を控えていたこともあって一流大学(同志社)を卒業し、さらに二足のわらじを器用に履く今江さんに憧れのようなものをいただいていたんだと思います。
苦手意識とありたい姿
そんな彼ももう50代後半です。
癌と闘いながらも最前線で成績を残し続けてきていましたが、下記のブログを書いていた2010年代の半ばは成績が奮いませんでした。
そして2015年の開幕戦は初日ノーフィッシュだったこともあり、予選落ち。
そんな苦悩をIMAKATSU内のブログ「Top Secret」で綴っていて、とても共感できました。
ブログを簡単にサマリーするとこんな感じです。
最近の日本のトーナメントではバスプロに求められるスキルが“バスを探すスキル”から、その場にいる“バスに口を使わせる(喰わせる)スキル”に変化している。
アメリカのトーナメントは今でも”バスを探すスキル”で勝負するため、現状の“喰わせ至上主義”を受け入れられない人はアメリカで勝負したりもする。
(清水盛三さんとかのことを指しているんだと思います)
ただ自分(今江さん)はその喰わせの釣りを否定せずに自分なりに追求してきた。
しかし追求すればするほどに、苦手意識から苦痛が生まれ、その苦痛が好きなことにまで影響を及ぼし始めた。
「バスフィッシングらしくカッコよく勝ちたい」
「トーナメントから新たなタクティクスを発信し、昔のように一大ムーブメントを市場に巻き起こしたい」
「トーナメントであっという釣りを魅せて、ファンを感動させ、ルアーフィッシングの未知の可能性を追及する場こそが自分のトーナメントだった。」
それゆえに勝ち続けることでファンを魅了してきた自分が、惨めに負け続ける姿でファンを失望させているのではないか。
もう引退した方がいいのではないか、と何度も自問自答してきたと。
これまで常に勝ち続けてこれた要因を今江さんは『出し抜く力』と表現していた。
出し抜く力
出し抜く力の1つ目は『場所の力』
まずは勘の良さで誰よりも先にバスを見つけ、なぜそこが釣れたかを徹底的に調べ上げる。
例えばより感度の高い記録紙式の魚探を使って、通常の魚探では発見できないウィードのエッジやエリ跡を発見したり、竹竿で湖底を小突いて沈船やオダといったマンメイドストラクチャーを見つけ出すといった地道な努力の積み重ねによるピンスポット発掘のアドバンテージ。
しかしそれはGPS魚探だったり、はたまた3D立体ソナーの登場により、誰でも水中を短時間で丸裸にできるようになり、そのアドバンテージは失われてしまった。
2つ目は『ルアーの個の力』
誰もが気付いていない破壊力を持つルアーの「個の力」を見つけること。
最近のルアーには明るくないためピンときませんでしたが、琵琶湖のディープホールなどの浚渫を攻めたマッドペッパーマグナム、逃げ惑う小魚をイミテートしたイレギュラーアクションのスラッゴー、常吉リグを初めてトーナメントに持ち込んだミートヘッドのダウンショットリグや早明浦ダムでのビッグバド等はしっかりと記憶に残っています。
しかしそれらも他のアングラーが使うことでスレてしまったり、類似したルアーが登場することでその優位性が消滅することは想像に難くありません。
特にそのルアーが個性的でパワーがあればあるほど、スレるのも早い。
また広大なアメリカと違ってバスボードを何十艇も同時に浮かべられるフィールドが日本にはせいぜい10〜20箇所しかないため、同じフィールドで繰り返しトーナメントが開催され、釣れる場所もルアーもどんどん絞られてしまい、結果的に喰わせのスキルの勝負になってきたのでしょう。
新たな決意
そんな彼ですが、引退の方向に進むのかと思いきや、決勝の行われた最終日に多くのファンと交流したことで決意を新たにしています。
「自分は(トーナメントに参戦して)32年経ってなお、まだまだ期待されていることを強く感じた」
「自分は引退することで裏切れない、逃げてはいけない」
閉幕まで途切れないファンにサインを続けているうちに責任感が強くなったと。
そしてこう文章を〆ています。
かつて自分は誰もが驚く優勝への最短ショートカット「獣道」を幾度も見つけてきた。
それはこれからの厳しい時代、未知のルアー開発なのか、未知の釣り方の追及なのか、
過去とは比べ物にならないほど険しい獣道だ。
しかしそれに挑戦し探し続け、試合で証明することが自分のスタイルなら、
これからいくら負け続けようとも、必ず誰も知らない、誰も通ったことがない
「ルアーの獣道」をまた絶対にもう一度見つけるまで諦めないつもりだ。
そのために自分はトーナメントをまだまだ諦めない。負けても負けても、続けていれば必ずチャンスはまた来る。
九州の皆さん、応援ご支持、心から感謝いたします。

純粋に感動してしまいました。
釣りで感動することは数あれど、釣り人の書いた文章でこんなにも心が動くとは思ってもいませんでした。
彼ほどの実績を残した人が、“続けていれば必ずチャンスはまた来る”と挑戦者のスタンスで向かっていくことに痺れました。
今まで今江さんのことはスゴい釣り人として見ていましたが、これからはトップアスリートとしての彼を応援します。